信じてはいけない -Mermaid on Mars-

NASAのローバー、スピリットの撮影画像の中に火星人が写っていると世界中が騒然(チト大げさか)となったのは2008年の新春早々であった。それは「火星の人魚(Mermaid on Mars)」と呼ばれた。

http://marsrovers.jpl.nasa.gov/gallery/press/spirit/20080103a.html
よほどNASAに問い合わせが入ったのか、2008年1月28日には科学系ニュースサイトで次のようなコメントが出る。

NASAでは、この人魚の形をした岩石は高さが6センチ。風化などの作用でたまたま、このような奇怪な形に仕上がってしまったのではないかと見ている。こうした自然の芸術、もしくは人工的なもののように見える岩石は、火星ローバーが撮影した画像の中には少なからず見つかってきたという。」【Technobahn 2008/1/28 17:12】

実は私はその三日前に mixi のコミュでこう書いた。「これはどう見ても小さい物。適当だが数センチから十数センチと僕は思う」。ほぼ当たっている。なんで大雑把とはいえ大きさが判ったかというと、過去にこのケースの参考になる画像を見ていたからであった。それは1997年にアレス谷に着陸したマーズ・パスファインダーソジャーナ画像である。
■地表を動き回るソジャーナ(合成)

http://mars.jpl.nasa.gov/MPF/ames/ames-rovers.html
ソジャーナは質量10.6kg, 65cm X 48cm X 30cm とみかん箱サイズの探査車。この画像は着陸地点の周囲を調査する一台のソジャーナを、着陸機が何度も撮影し、後で一枚に合成したものだ。これによって石の大きさや距離感がわかる。これを基準にしてスピリット画像の人魚石の大きさを推測したというわけ。

■戦車石?

同じソジャーナのアレス谷画像から。この石について著名なシドニア研究家ホーグランド氏は、自サイトでなんと「太古の戦車の残骸でなかろうか」と発表した(現在サイト内からその記事は消されている)。しかし右の合成写真によればソジャーナより小さい石であることが判る。その事を知らないはずがないのできっと分かってやったのだろう。話題づくりの為に。
余談だが、ホーグランドがスキッパー氏のヘイル・クレーター遺跡を否定していることから、両者の仲はよろしくないらしい。