ついに発見、炭酸塩

2010年6月3日付プレス・リリース
NASA Rovers Finds Clue to Mars' Past and Environment for Life
(火星の太古と生命が生息する環境への手がかりを発見)

http://marsrovers.jpl.nasa.gov/gallery/press/spirit/20100603a.html
NASAのスピリットが「ハズバンド・ヒル」から「ホーム・プレート」の間にあるコマンチと名付けられた岩を、2005年から4年かけて調査したところ、その鉱物は高濃度の炭酸塩を含んでいた。これは火星に非酸性の水が存在した証拠である。
「これは最も重要な発見のうちの一つだ」。スピリットの主任研究員であるスクワイヤーズ博士は語る。「古代の水は酸性ではなかった。この岩露出部が大量の炭酸塩を含んでいたということは、この地が太古の一時期、生命が生息するのにかなり有利な環境にあったのだろう」(要約)
■日本語詳細が「日本惑星協会」のサイトに出ている。
「スピリットが太古の火星に生命の存在に適したと思われる証拠を発見していた」
http://www.planetary.or.jp/HotTopics/topics100609_2.htm
■地質的解説
太古の地球をモデルにして話せば、当時大気成分の大部分を占めていた二酸化炭素の大気は海水に溶解して炭酸塩を生じ、それは沈殿し堆積して大量の石灰岩や炭酸塩岩へと変化した。pH値の低い(酸性の)水ならそれらは分解してしまうが、海水はアルカリ性質なので岩になったのである。これらの岩には海生生物起源のものが多い。藍藻類(シアノバクテリア)からなるストロマトライト、他にサンゴ礁、白亜(チョーク)などである。

http://home.u05.itscom.net/apodjpn/apodj/2002/200206/fb020627.htm
つまり、太古のグセフ・クレーターに存在した水もまた、大気が溶け込み岩を作るほど長期間存在し酸性ではなかった。それなら岩に生物起源の可能性があるということ。更に言うならマーディム渓谷をさかのぼった高地には大きな湖が存在し、当然そこも生物が生息するに適した環境だったのだろう。
■雑感
確かJAXAのウェブ記事だったと記憶しているが、ローバーが火星に降りる前には、NASA内で「火星にかつて水があった」「昔も今も水は無かった」と主張する二人の大先生がいて、中堅の学者達はその二人の間を自由に行き来しながら研究していたそうだ。僕はニュートン・ウェブサイトで2000年頃からの、NASAによる火星に関する記事(ダイジェスト版だが)を探した事があった。水の存在に関しては、交互のように相反する発表が掲載されていたように思う。だから二人の大先生の話には得心した。どっちが勝ったかは今や明白であるが。
さて今のNASAではおそらく「火星にかつて生物がいたかどうか」が論じられているのだろう。その場合、生物がいた側は地質学者達で、そっちが主流なのに違いない。
ニュートン・データベース」
http://www.newtonpress.co.jp/science/news/sensor/index.html#