2010年における最終的な推理 -1-

シムド谷には人工物遺跡のようなものが存在する。それはかなり古く見えて一部崩壊している。長期間火星の過酷な環境にさらされたであろう外観は、一見全長2〜3kmの巨岩に見える。しかし他の地域の岩とは明らかに異質な感じがするのだ。

■シムド大洪水(右側が低地、北方向)

この地域は数十億年前に大洪水に襲われた。原因は火星に全球凍結の時代があってその後火山が活発化し膨大な氷が溶け出したことにある。それは大規模な洪水となり、北方の低地に流れ出して広大な湖もしくは海を形成した。このようなことは多くの場所で起こった。時期は約38億年前〜34億年前、ヘスペリア代の頃と言われている。

■洪水跡

シムド谷に見られるものを人工物遺跡として思考実験していくと面白く話が発展する。遺跡をつぶさに観察すると、水流の跡が目視で確認できることから大洪水の前にこれらが作られて、大洪水によって崩壊したと考えられる。
前述した全球凍結の時代はおよそ39億年前であり、それ以前は温暖湿潤な環境だったことが地質学者たちの研究によって判明している。火星全土に残る海岸線の分析から海が存在した事、二酸化炭素の濃密な大気が地表を暖め、強力な磁場が有害な宇宙線をブロックして、火星全46億年史の最初の6億年は生命が存在するに有利な時代であったことはもはや定説である。

■グセフ・クレーターの石(約30cm大)

おそらくはこの6億年間のどこかに、他星系から火星に調査に来た異星人がいたのだろう。そして火星のいくつかの地点に基地を置いた。この頃の地球はジャイアント・インパクトの影響でまだ安定していなかっただろう。比べて火星では陸上の植物はまだ僅かでも、海には酸素を出すシアノバクテリア類が出現し、海洋生物は三葉虫レベルまで発達した可能性がある。このまま進化が続けば早い段階でこの太陽系初の知的生命体が生まれるはずだった。がしかし…

■参考文献
「火星の生命と大地46億年」丸山茂徳
「火星-赤い惑星の46億年史」ニュートンムック
「綺想科学論」南山弘